Cannabinoid Magazine

大麻・CBD・合成カンナビノイドは10代の青少年のメンタルヘルスにどう影響するのか？

2023年8月30日

2023年8月31日

日本で大麻は違法ですが、CBDや、合成カンナビノイドは広まりつつあります。

本日は、これらの成分を10代の若者が摂取した場合、彼らのメンタルヘルスにはどう影響するのか、を調査したイギリスの研究をお知らせします。

具体的には、

「各成分に対する考察」

「どんな人がどんな方法で調査されたのか？」

「調査結果と傾向、本当に伝えたいことは」

の順にお伝えします。

結論から言ってしまうと、これらを摂取した青少年は、不安やうつ様症状などが現れるリスクが高まるというものですが、カンナビノイドを扱う大人として、それ以上に考えさせられる事がありますので是非ご一読ください。

＊この記事に含まれる情報は、医療従事者からの情報に代わるものではありません。

＊専門家の監修が入っている情報ではありません。

はじめに

今回ご紹介する研究論文は、イギリスにおける大麻、CBD、合成カンナビノイドの使用と、青少年のメンタルヘルスとの関連について深く掘り下げたものです。

イギリスは日本同様大麻が違法な国で、CBDや合成カンナビノイドも流行しているという点においては我が国の現状と、とても似ています。

これら製品はネット上でも入手しやすく、種類も豊富、パッケージもポップなため、青少年の間で使用が増加するのは当然の事でしょう。

果たしてこれらの成分は、未来ある10代の若者のメンタルヘルスにどう影響を及ぼしているのでしょうか。

参考：James Hotham et al. | Association of cannabis, cannabidiol and synthetic cannabinoid use with mental health in UK adolescents | Cambridge University Press: 24 July 2023

大麻と青少年

青少年と大麻の使用についてお話をする前に、世界における大麻に対する認識や政策の劇的な変化を語らざるを得ません。

アメリカでは多くの州で、医療大麻のみならず嗜好用大麻も認可されてきています。アメリカ以外の国でも大麻合法化に向けての動きがあることはネットニュースなどで目にしたことがあるでしょう。

大麻が「タバコより依存性が無く、アルコールより安全だ」という主張は、今では日本の若者の間にも広まっているかもしれません。

しかし、日本では依然違法薬物ですから、大麻やTHCを含む規制薬物を所持していると当然の如く逮捕、起訴されます。

我が国で「海外ではOKだ！大麻はいい物だ！」という主義主張を貫き通して大麻を所持する代償は、5年〜10年以下の懲役、200万〜300万以下の罰金刑に加えて、一時的に社会から抹殺されるケースもあります。

爆発的人気のCBD

世界的にも爆発的に広まっているCBDですが、この現象は単なる流行ではありません。

CBDを含めることができる製品は、食料品や飲料、Vapeやオイルだけでなく、抗酸化作用や抗菌特性を活かし、マイクロカプセル化されたCBDを女性用の生理用品に含み、膣の炎症を抑え、腹筋を弛緩させるという研究もあるほどです。

この、CBDが持つ適応性が、世代、性別を問わず人気を博し、様々な層に広まった大きな要因の一つです。

このようにCBD製品が増加する中で、青少年がこれらをどのように認識し、使用しているかを理解することはとても重要であると言えます。

参考：Julija Volmajer Valh et al. | Microencapsulation of Cannabidiol in Liposomes as Coating for Cellulose for Potential Advanced Sanitary Material (2020)

合成カンナビノイドの暗躍

合成カンナビノイドとは化学合成された薬物です。この成分を青少年が使用した際の精神面への影響もこの研究では調査しています。

合成カンナビノイドは通常、マイルド〜強力な精神作用があることが特徴で、その薬理動体はΔ9THCに類似しているものが多く、中にはTHCよりも強い効果を持つものもあります。

一般的には規制薬物と異なる化学構造であるため、アメリカのケースでは、冒頭でお伝えした大麻（Δ9THC）が違法な州の市場にも流通が可能で、人々も容易にアクセスできます。

ある程度広まった後、その成分が原因の健康被害を訴える人々の声などを受けて、政府から規制がかかるという流れです。

日本に目を向けても状況は全く同じで、強力な合成カンナビノイドは嗜好品として使用されており、2022年〜2023年の間にHHC、THCO、HHCO、THCHなどの成分が既に規制薬物となっています。

これら大麻・CBD・合成カンナビノイドを10代の青少年が使用した場合、彼らのメンタルヘルスにどの様な影響を及ぼすのかを調べた研究をご紹介します。

どんな人がどんな方法で調査されたのか

調査期間

2019年9月〜2020年3月

集まったデータ

イングランドとウェールズから16校が無作為に抽出された。

調査対象年齢と人数

6672人の13歳〜14歳の青少年。

調査方法

アンケートを配り、自分たちの手でアンケートに答えてもらった。

調査結果

アンケート調査の結果、6672人中、

大麻使用：5.2%

CBD使用：1.9%

合成カンナビノイド：0.6%

上記の割合の青少年がそれぞれの物質を使用していたと自ら報告したそうです。

そして、これらを使用している人は使用していない人と比較して、「うつ病性障害、不安障害、行為障害、幻聴の可能性が高い症状を報告する」可能性が高いと言われています。

それぞれの薬物を使用した青少年の傾向

大麻を使用した青少年の傾向

大麻の使用は、

・性別がマイノリティであり、
・無料の学校給食を受ける権利があり、
・就業している大人がいないところに住んでおり、
・毎週喫煙しており、
・過去30日間にアルコールを摂取したことがある

という参加者に多い傾向であったと言います。

CBDを使用した青少年の傾向

CBDの使用は、

・無料学校給食の受給者で、

・無職の成人(と同居しており、)

・週1回の喫煙、

・過去30日間の飲酒経験者

という参加者に多い傾向であったと言います。

合成カンナビノイドを使用した青少年の傾向

合成カンナビノイド使用者の特徴は、大麻、CBDの特徴と類似していたそうです

今回の結果からわかること

今回の研究を見ると、大麻、CBD、合成カンナビノイドを摂取している若年者は、通常の同年代の若年者と比べると、うつ病性障害、不安障害、行為障害、幻聴の可能性が高いということでしたが、これらが先か後かという因果関係まではわからなかったと言っています。

家庭環境に関しては、比較的所得の低い両親と同居していることや、個人の資質による可能性もあるということですが、家庭環境が悪かったことで、何らかの精神障害を抱えていてこれらの成分にアクセスしたのか、これらの成分にアクセスすることで、潜在的に持っていた精神障害が現れたのかはわからないということです。

ただし、 CBDと大麻を同時に摂取した場合と、大麻のみを摂取した場合では、前者の方が症状が軽かったと言っています。

まとめ

今回の研究結果を見てわかる大事なことは、いずれのケースでも未成年者はこれらの成分にアクセスするべきではないということと、治療用途として使用せざるを得ない場合は、医療関係者の指示を仰ぐことは必要不可欠であるということです。

また、これら成分（薬物）を摂取するきっかけや、何によって動機付けさせられているのかと言う目では見えない悩みのヒアリングがとても重要で、相談者の家庭環境や生い立ちなどを考慮した上で、処方のみではない最適なソリューションを提案してあげる必要があるかもしれない、ということもわかりました。