Cannabinoid Magazine

CB1受容体に結合して機能するテルペンは有るのか無いのか?

2023年8月5日
「受容体に結合するテルペンってなに?」
「そもそも受容体ってなに?」
 
 
「受容体に作用するとどうなるの?」
 
 
「CB1受容体に作用するテルペンなんてあるの?」
具体的には、
 
 
CB1、CB2受容体とは何か?その作用を解説
 
 
「CB1受容体作用テルペンの有無を探る上で重要なアントラージュ効果を解説
 
 
「論文から見たCB1受容体作用テルペンの有無

目次

*筆者は医療や科学の専門家ではありません。
*この記事に含まれる情報は、医療従事者からの情報に代わるものではありません。
*考えられるすべての使用法や注意事項、相互作用、副作用を網羅するものでもありません。そのため、このウェブサイト上で読んだ内容を理由として専門家からの医学的アドバイスを無視したり、その実践を遅らせたりすることが無いようお願いいたします。
 
 

CB1、CB2受容体とは?

CB1はカンナビノイド受容体1型、CB2はカンナビノイド受容体2型の略称で、ヒトが体内にもつソケットのようなものです。「CB」とは「カンナビノイド」が略されたもので、受容体(Receptor/レセプター)の頭文字をとってCB1RやCB2Rと表されることもあります。

CB1受容体とは

主に、脳や脊髄の神経細胞に存在し、その他脾臓、白血球、内分泌腺、生殖器、胃腸、尿路の一部、末梢器官などにも点在します。脳内に存在するCB1は記憶の処理や痛みの調節、運動抑制などの機能に影響を与えます。

CB2受容体とは

CB2は主に、白血球、扁桃腺、脾臓、免疫細胞に存在します。中でも特に免疫系においての重要な機能の一つは、免疫機能のバランスを保つ物質である、サイトカインを放出する調節機能です。
参考:
[1] NEWS Medical Life Science | Cannabinoid Receptors (2023/8/4閲覧)

このように、身体中に点在する受容体にカンナビノイドが作用するため、体内の様々な箇所で効果が現れるのです。

CB1とCB2に成分が結合するとどうなるのか?

CB1とCB2では、ヒトの体内で存在する場所が異なるため、活性化される場所も当然異なります。
 
 
CB1が活性化されると、大麻を摂取したような効果が肉体的にも精神的にも現れますが、CB2が活性化されてもそのような効果は見られません。つまり、CB2へ働きかける物質は精神作用を伴わないので、CB2作用薬の研究は積極的に行われているようです。
 
 
身近な例を挙げると、「葉物野菜を食べると健康に良い」の根拠は、葉物野菜に含まれる「食べるテルペン」カリオフィレンがCB2受容体を活性化させるためだと言われています。

CB1に作用するテルペンはあるのか?

CB1に作用するということは精神作用を引き起こす可能性がある物質と言うことですが、このCB1に作用するテルペンは存在するのでしょうか?
 
 
そこで5つの論文からこの情報の信憑性について調査してみようと思います。

アントラージュ効果とは

アントラージュ効果は日本語では「側近効果」と呼ばれ、「大麻のフルスペクトラムが最も効果的に機能する」と考えられている実証されていない仮説です。
 
 
実はこのアントラージュ効果は賛否両論で、アントラージュ効果を支持する人々の論拠は「THC以外のカンナビノイドもCB1などの中枢神経に働きかけるため単体よりも効果的だ」[1]というもので、CBDがよく引き合いに出されます。
 
 
例えば、アメリカにはマリノールと呼ばれるTHC製剤があります。THCのみを摂取した場合と、CBDを同時に摂取した場合では後者の方が得られる利点は大きく、THCそのものでは負の作用が大きいがCBDと同時摂取だと負の作用が軽減されるとも言われています。
 
 
これらを提唱する、アントラージュ効果で有名なイーサン・ルッソ博士のTaming THC[2]という論文では、カンナビノイドとテルペンの同時摂取の重要性が示唆されています。
 
 
ではここから、このアントラージュ効果を支持する論文と、そうでない論文を合計5つ取り上げて、CB1に作用するテルペンの存在を探ってみたいと思います。

1.【アントラージュ効果はあるかも!】2020年の論文の内容とは?

β-ピネン、α-フムレン、ゲラニオール、リナロールという4つのテルペンを、マウスの細胞を用いて調べたそうです。
 
 
その結果、CB1に作用する物質と比べて、4種類ともある面で効果的に刺激したと言います。そして、ゲラニオールとリナロールはCB1選択的なアゴニストである可能性、β-ピネンとα-フムレンは非選択的であり、CB1以外の受容体も活性化する可能性がある。と言っています。
 
 
つまり、β-ピネン、α-フムレン、ゲラニオール、リナロールはCB1に対して作用する側面がある可能性が示唆されています。

2.【アントラージュ効果はないかも!】2022年の論文の内容とは?

ミルセン、リナロール、リモネン、α-ピネン、ネロリドールを2つの神経細胞モデルを用いて効果を調べたそうです。
 
 
その結果、ミルセンは、大麻の高揚感を高めると一般的に考えられているがその可能性は低く、その他のテルペンも神経細胞のカンナビノイドシグナル伝達にはほとんど影響を及ぼさなかったと言います。
 
 
ただ、ネロリドールのみ2種類の神経細胞モデルにおいてカンナビノイドシグナル伝達に対して顕著な効果を示した。とあります。
 
 
つまり、ネロリドール以外のテルペンはCB1を活性化させる可能性は低いということが示唆されています。

3. 【アントラージュ効果はないかも!】2020年の論文の内容とは

ミルセン、α-/β-ピネン、β-カリオフィレン、リモネンなどのテルペンをそれぞれ単独、または混合、THCやCBDと組み合わせると受容体への影響はどうか?という試験を行ったそうです。
 
 
その結果、β-カリオフィレンのみがCB2と非常に弱い活性を示した以外は単独または混合のいずれもがCB1またはCB2と直接相互作用するという仮説を支持するデータは得られなかったと言います。
 
 
つまり、一般的な揮発性のテルペンはCB1に結合する可能性は低いことが示唆されています。

4. 【アントラージュ効果はあるかも!】2023年の論文の内容とは?

16種類のテルペン単独とTHC単独、また、THCとテルペン混合物によるCB1受容体の活性化を定量化した[1]そうです。
 
 
その結果、「すべてのテルペンは、個別に試験した場合、THC単独による活性化の約10~50%でCB1受容体を活性化することが示された。」また、「THC単独よりもテルペンと同時に摂取した方がCB1の活性を大きく増加させ、場合によっては数倍にもなった」と言っています。
 
 
中でも、ボルネオール、ゲラニオール、リモネン、リナロール、オシメン、サビネン、テルピネオールなどの特定のテルペンが、たとえ少量であっても、CB1受容体におけるTHC活性を増幅する[2]との事です。

5. 【アントラージュ効果はないかも!】2019年の論文の内容とは

α-ピネン、β-ピネン、β-カリオフィレン、リナロール、リモネン、β-ミルセンという、一般的なテルペノイドを単独、または受容体作動薬と組み合わせて、CB1とCB2のシグナル伝達について調べたそうです。
 
 
その結果、「いずれもCB1またはCB2を直接活性化せず、植物性カンナビノイド作動薬Δ9-THCのシグナル伝達を調節しなかった。ただし、CB1やCB2以外の異なる分子標的に作用する可能性の方が高い」と言っています。

5つの研究のまとめ

これまでに見てきた5つの研究を見ると、アントラージュ効果について3つは否定的で2つは肯定的でした。
 
 
これらの中で、CB1に作用する可能性があるとされているテルペンは以下の通りです。
 
  • β-ピネン
  • α-フムレン
  • ゲラニオール
  • リナロール
  • ネロリドール
  • ボルネオール
  • リモネン
  • リナロール
  • オシメン
  • サビネン
  • テルピネオール

 

反対に、CB1に作用しない可能性があるとされているテルペンは以下の通りです。

  • ミルセン
  • リナロール
  • リモネン
  • α-ピネン
  • β-ピネン
  • β-カリオフィレン
  • β-ミルセン

 

そして、「作用する」にあって「作用しない」に無いものが以下の通りです

  • α-フムレン
  • ゲラニオール
  • ネロリドール
  • ボルネオール
  • オシメン
  • サビネン
  • テルピネオール

 

ただし、数多くあるアントラージュ効果を支持/非支持する論文の中のたったの5つの結果ですからあくまでもご参考まで。

一般的なテルペンに関する情報はこちらに記してありますので併せてご覧ください⇩

CB1に作用するテルペンの有無に関する考察

ご紹介した中で最も新しい2023年の研究は、イスラエルの科学者たちによる論文です。
 
 
この論文では、「CB1受容体を活性化させるテルペンを特定出来れば、THCなどの精神活性作用のあるカンナビノイドを低容量で処方できるため、小児や高齢者などへの処方も可能になる可能性を秘めており、日中用、夜用などの使い分けもできるようになるだろう」と言っています。
 
 
この研究結果をもとに、「CB1作動テルペン」と銘打って特定のテルペンの販促を始めたのかもしれません。

まとめ

CB1受容体を活性化させるテルペンはあるのか?無いのか?という質問に対する答えは、より詳しい研究が必要ではあるが商品化されているものもある。といったところです。
ということで、

の説明を終わります。

 

ここまで読んでくださって本当にありがとうございました!(人´∀`).☆.。.:*ありがとぉ☆彡(*´ω`*人)

 

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Webクリエイター、ライターです。海外のカンナビノイド研究や論文を参考に、論理的な記事作成を心がけています。生活(Life)が豊か(Luxury)になるようこのサイトをLifeLUXと名付けました。「カンナビノイド情弱になるな!」をモットーに、わかりやすい説明を心がけています。応援よろしくお願いします。(_ _))ペコッ

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